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台風でも屋根はビクともしない!耐風素材&形状と即効防災テク

台風の季節が近づくと、屋根の強度に不安を感じる方も少なくありません。

実際に、令和元年に千葉県房総半島を直撃した台風15号では、多くの住宅で屋根が吹き飛ばされるなど、深刻な被害が発生しました。このような大型台風が再び発生し、今度は自分の住まいに被害をもたらす可能性も十分に考えられます。

こうしたリスクに備えるためには、台風に強い屋根の構造や素材を理解し、必要に応じて補強や点検を行っておくことが大切です。被害が起きてからでは遅いため、事前の対策が住まいと家族の安全を守る鍵となります。

この記事では、台風に強い屋根の特徴について詳しく解説します。ご自宅の屋根がどのような状態なのかを確認し、万が一に備えた対策を考えるきっかけにしてみてください。

 

台風に強い屋根とは?

台風に耐える屋根とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

実際の被害事例やデータを参考にしながら、その条件を整理してみましょう。

 

「台風に強い」とは?

まず、「台風に強い」とされる屋根には、明確な基準があります。それは、強風や飛来物に対して損傷を受けにくい構造や性能を持っていることです。

屋根が台風によって受ける主な被害には、次のようなケースがあります。

  • 瓦などの屋根材が風で飛ばされる
  • 棟板金(むねばんきん)やケラバなど、屋根の端部分の部材が外れて飛ぶ
  • 飛んできた物が屋根にぶつかり、瓦や板金が破損する

このような被害を最小限に抑えるためには、屋根材がしっかりと固定されていて、多少の衝撃にも耐えられる強度を持つことが不可欠です。

つまり、台風に強い屋根とは、風で飛びにくく、外部からの衝撃にも壊れにくい耐久性と施工品質が伴った屋根のこと。見た目の美しさやデザインだけでなく、台風という自然災害にも耐える構造であるかどうかが、今後ますます重要になってくるでしょう。

 

また、台風への耐久性は屋根の構造や素材だけでなく、建物の築年数とも密接に関係しています。
実際、(一社)全日本瓦工業連盟および全国陶器工業組合連合会の合同調査チームが公表した「令和元年台風15号による屋根被害視察報告書」からは、以下のような傾向が明らかになっています。

  • 築10年未満の住宅では、屋根の被害はほとんど確認されなかった
  • 築20年を超えたあたりから、特に粘土瓦の被害が増加
  • 築30年以上になると、屋根材の種類に関係なく何らかの損傷が見られる傾向にある

この調査結果から言えるのは、築10年未満の屋根であれば、比較的新しい基準や施工方法により、台風に対しても十分な耐性を持っている可能性が高いということです。

逆に、築20年〜30年以上が経過している住宅では、屋根材の劣化や施工の古さが原因で、台風被害を受けやすくなっていることがわかります。こうした建物に住んでいる方は、屋根の点検や補修を早めに行っておくことが、被害を未然に防ぐための大きなポイントとなります。

 

屋根材

屋根材の選定は、台風に備えるうえで非常に重要な要素です。ここでは、特に耐風性に優れているとされる「金属屋根」について詳しく見ていきましょう。

金属屋根(ガルバリウム鋼板など)

ガルバリウム鋼板に代表される金属製の屋根材は、風に強く、破損しにくい屋根材として注目されています。台風に対して有利とされる主な理由は次の2点です。

  • 屋根材がしっかりと固定されている
    金属屋根は、施工時にくぎやビスで下地に直接固定する工法(立平葺〈たてひらぶき〉や瓦棒葺〈かわらぼうぶき〉など)を採用していることが多く、強風による浮き上がりや飛散を防ぎやすい構造となっています。
  • 割れやすい素材ではない
    瓦のように割れる心配がなく、金属特有の「へこみ」はあるものの、構造的な破損には繋がりにくいという特長があります。

ただし、金属屋根は耐久性に優れ、非常に軽量である一方で、長期間にわたり点検やメンテナンスを怠ると、固定しているくぎやビスが徐々に緩んでしまう恐れがあります。その結果、強風時には屋根材が飛ばされるリスクが高まるのです。

さらに、施工方法によっては、大きな板金を組み合わせて取り付ける場合があり、このタイプはひとたび一部が風でめくれると、そこから風の力を受けて広範囲にわたって一気に屋根材が剥がれてしまう危険性もあります。

また、金属屋根は潮風に含まれる塩分による腐食を受けやすいため、海に近い地域では劣化が早まりやすく、設置には慎重な判断が求められます。

 

粘土瓦

従来の粘土瓦は、以下のような構造で施工されてきました。

  • 土葺き
     瓦の下に土を敷き、その上にただ載せるだけの工法。固定力が弱く、強風でずれたり飛ばされやすい傾向があります。

  • 引っ掛け桟葺き
     桟木と呼ばれる細い木材に瓦を引っ掛ける施工方法。こちらも基本的には釘などでの固定がないため、強風時に不安が残ります。

防災瓦は、地震や台風などの自然災害による被害を最小限に抑えるよう設計された耐久性の高い屋根材です。

瓦同士がしっかりと噛み合う構造になっており、さらに釘で固定することで、揺れによるズレや強風による剥がれを防ぎやすくなっています。

従来の粘土瓦と比べてやや軽量化されてはいますが、金属製の屋根材よりは重みがあるため、風によって飛ばされにくいという利点もあります。また、防災瓦は塩害に強い性質を持っているため、金属屋根が不向きな沿岸地域でも安心して使用できる点が魅力です。

ただし、焼き固められた粘土製である以上、衝撃によって割れてしまう可能性はゼロではありません。こうした点も考慮しつつ、定期的な点検を行うことが重要です。

 

屋根の形

屋根を台風に強くするには、使用する素材だけでなく、形状にも大きな影響を受けます。基本的に、風を受ける面積が小さいほど、建物にかかる負荷は軽減され、被害を受けにくくなります。

 

一般的な住宅に採用される屋根形状には、主に次の3つがあります。

  • 切妻(きりづま)屋根
  • 寄棟(よせむね)屋根
  • 片流れ屋根

 

この中で、風を受ける面積が最も大きいのが片流れ屋根、次に切妻屋根、そして最も風の影響を受けにくいのが寄棟屋根です。

このことから、屋根の形状という視点で見れば、寄棟屋根がもっとも台風に強い形状であるといえるでしょう。風が四方向から均等に流れる設計のため、特定の面に風圧が集中しにくく、屋根の安定性が高まります。

 

屋根の勾配

屋根の勾配も、台風への耐性を左右する重要な要素です。基本的に勾配が緩やかであるほど、屋根が受ける風の力は小さくなるため、台風の際の被害を軽減しやすくなります。

しかし、勾配が緩すぎると別のリスクが生じます。雨水がスムーズに流れにくくなり、屋根に水が滞留することで雨漏りや屋根材の劣化につながる恐れがあるのです。

そのため、屋根の勾配は「風による被害」と「雨による劣化」、この2つのリスクのバランスを取りながら慎重に設計することが大切です。適切な角度を選ぶことで、台風にも雨にも強い屋根を実現することができます。

 

既存屋根の強化方法は?

既に建てられている住宅でも、適切な補強を行えば屋根の台風対策を強化することが可能です。新築でなくてもあきらめる必要はありません。

平成13年に策定された「瓦屋根標準設計施工ガイドライン」では、既存の屋根を補強するための具体的な方法が示されています。このガイドラインに準拠して施工することで、風への抵抗力を高めることができます。

ただし、この補強工事が効果を発揮するのは、屋根材が良好な状態であることが前提です。もし既に屋根材が劣化していれば、補強しても十分な耐久性が得られない可能性があります。

また、現時点では問題がなくても、今後の経年劣化によって効果が薄れる可能性もあるため、補強の前に屋根全体の状態をしっかりと点検しておくことが重要です。必要に応じて、補修や葺き替えといった選択肢も検討しましょう。

 

棟材の再固定

屋根の中でも特に風の影響を受けやすいのが、屋根の頂点に位置する「棟(むね)」部分です。この部分の固定が甘いと、台風などの強風時に屋根材が飛ばされる恐れがあります。そのため、棟材の再固定は台風被害の予防に非常に有効です。

金属屋根の場合、まずは棟部分の板金を取り外し、下地材が劣化していないかを確認することが重要です。劣化があれば、補修または交換してから再度しっかりと固定し直します。

一方で、粘土瓦の屋根では、築20年以上経っているものの多くが固定されていないか、針金で簡易的に留められているケースがあります。これらは強風に弱いため、棟瓦を一度取り外し、鉄芯(補強材)を通したうえで再固定する工法に変えることで、より頑丈な構造に改善することができます。

こうした対策を講じることで、台風の際の被害を最小限に抑えることが可能になります。

 

瓦材の固定

昔ながらの粘土瓦は、下地にしっかりと固定されていないことが多く、強風を受けると瓦がずれて飛ばされる危険性が高いという特徴があります。特に台風のような激しい風圧にさらされると、被害が一気に広がってしまうことも少なくありません。

こうしたリスクを軽減するためには、すべての瓦を下地にビスや専用の金具で確実に固定する作業が必要です。このような施工を行うことで、瓦の浮きや飛散を防ぎ、屋根全体の耐風性を大きく向上させることができます。

見た目には変化がなくても、内部の施工方法を見直すだけで台風に強い屋根へと生まれ変わるため、特に築年数の経過した住宅には早めの対策がおすすめです。

 

その屋根、見逃すと危険!今すぐリフォームしたい危険サイン

屋根の補強で台風対策ができるケースもありますが、状況によっては補強では対応しきれず、全面的なリフォームが必要になる屋根も存在します。

特に注意したいのは、築20年以上経過した粘土瓦の屋根です。この時期の建物は、瓦を下地にしっかりと固定しない施工法が主流だったため、強風にさらされると瓦がずれたり、飛散してしまうリスクが非常に高くなります。

また、20年以上メンテナンスを行っていない金属屋根やスレート屋根も要注意です。長年の経年劣化によって、留め具のゆるみや下地材の腐食などが進んでいる可能性があります。実際、令和元年に房総半島を襲った台風15号では、こうした築年数の古い屋根に多数の被害が出ています。

ご自宅の屋根がこのような状態に当てはまる場合は、早めのリフォームを検討すべきです。
屋根全体を見直すことで、下地まで含めて新たに作り直すことができ、屋根の寿命そのものを大幅に延ばすことができます。適切なリフォームを行えば、今後10年以上は大きなメンテナンスの必要がなくなるケースも多く、結果的にコストパフォーマンスの高い対策となります。

さらに、軽量な屋根材へと変更すれば、耐震性の向上といった副次的なメリットも得られるでしょう。ただし、リフォーム工事は規模が大きくなるため、相応の費用がかかる点も念頭に置いておくことが大切です。